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「社会保障は性風俗に敗北した」を考える

「セックスワークサミット2017秋」レポート 前編

●社会保障は性風俗に対して後れを取っている

「社会保障は性風俗に敗北した」という言葉があります。私は本当に、心からそう思います。ゆずりはだけでは全ての相談を解決できないので、相談者の方が公的な支援を適切に受けられるように同行やサポートをするのですが、一般の公的な支援で、性風俗と同じようなサポートが受けられることはまずない。本当に困った時に、役所の窓口や女性相談の窓口では相談しても受けられないサポートを、性風俗がきちんと保証しているという一面があると思います。

 全ての性風俗のお店が安心安全に働ける場だとは言い切れないのですが、社会保障は性風俗に対して支援の面で後れを取っていると言わざるを得ない。自分も支援者として恥ずかしい、悔しい思いでいます。

 ゆずりはでは施設の職員や学校の先生からの相談も受けていますが、「教え子や子どもが退所した後風俗で働いている。それをやめさせたい。でもどれだけ説得してもやめないから、ゆずりはさんからやめるように説得してください」という支援者からの相談が、必ず年間に何件か来るんですね。

 危険を伴うような仕事や職場は実際にあるので、その心配は確かにその通りです。でもやめさせることだけが支援ではない。「やめなさい」というからには、性風俗で働いている子が、他の仕事を探すための求職活動をする間の生活の保障、住居の保障、経済的な保障が必要になります。もしかしたらメンタルのケアも必要かもしれない。

 そういった支援を、「一刻も早くやめさせたい」と言っているあなたたちが担ってもらえるんですか。そうした用意があるならば、私たちも考えなくもないのですが、とお伝えすると、必ずだんまりになる。「心配だ、心配だ」というのは、あなたが心配なだけでしょう、と。自分の心配を相手に押し付けているだけです。

 彼女たちは生きていくため、家賃を払って食っていくために必死でやっている。プライドを持ってやっている子もいるので、頭ごなしに否定するような価値観の押し付けをしてはいけない。本当にその子のことを思っているのならば、心配をしているのならば、今彼女に対して性風俗のお店が保証してくれている支援の代わりに、できることをやるべき。ただの心配は何の役にも立たない。

 そういうやり取りを支援者の方としていると嫌われてしまうのですが(笑)、支援をする側はそういう点に敏感でならなければいけない。彼女たちが働いている背景を見極めていけば、そんな簡単に「やめなさい」という言葉は出ないはず。そういった意識は、どれだけ経験を重ねたとしても、忘れずに持ち続けたいと思っております。

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「セックスワーク・サミット2017冬 「つながる風俗女子」+シンポジウム「みんなでつくる『適正風俗』」(主催:一般社団法人ホワイトハンズ)が、2017年12月3日(日)に、東京都渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターにて開催されます。

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坂爪 真吾

さかつめ しんご

1981年新潟市生まれ。一般社団法人ホワイトハンズ代表理事。東京大学文学部卒。



新しい「性の公共」をつくる、という理念の下、重度身体障害者に対する射精介助サービス、風俗店の待機部屋での無料生活・法律相談事業「風テラス」など、社会的な切り口で、現代の性問題の解決に取り組んでいる。2014年社会貢献者表彰、2015年新潟人間力大賞グランプリ受賞。著書に『セックスと障害者』(イースト新書)、『性風俗のいびつな現場』(ちくま新書)、『はじめての不倫学』(光文社新書)などがある。


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